夢の跡残る今
潰れたパチンコ屋さんの向かいにある食堂に,
戦争終わりまで樺太に住み,
釧路で移住した後に出会い,
結婚した老夫婦が居た.
戦後釧路の繁栄と衰退を見て生きた、釧路の生き字引だ.
6年前、自分はふらっと食堂を訪れた.
煮込みうどんを作りながら,昔の思い出を話す老夫婦を見ていると,昭和の全盛期が目の前にありありと浮かぶ.
人溢れる駅地下
鮮やかな看板が並ぶ劇場
デパートに並ぶ老若男女
若かりし頃の老夫婦のデートの情景までも
ありありと
憧れの釧路が目の前にあった.
ふとその情景を思い出して
また話を伺いたいと先日訪れたが
老夫婦の店は既になく,
辺りはシャッター街と化してしまった.
もうあと数年してしまえば
戦時中の話を聞くことも
戦後の激しい時代も聞くことも
殆ど出来なくなるのだろう.
寂しいな
可能なら
その時代の話を聞きたかった
さらに言えば
私はその時間を生きたかった
そう思った.
自分はあとの時代の人達に
そう思われるような生き方を出来るだろうか
そんな時代を作れるだろうか
可能なら
夢の跡の様な少し寂しい時代ではなく
これからも楽しいと思えるような時代に
自分はそうしたい.